作において、オリジナリティは本質的なものなのかもしれません。


 芸術とも関わる考え方で、オリジナリティを評価の最大基準にしている人も少なくないと思います。


 僕は、学生の頃に現代音楽の影響をモロに受けて、創作においては、独創的な発想が非常に重要なのだと思うようになりました。


 今はいろいろ学んで、その限りではなくなりましたが、それでも人と違う表現をしたいという欲求は残っています。





§研究、という発想




 結論から書きますが、真似ではなく研究というスタンスであれば、自然に他者の作品の持つ要素を自分に取り入れられると思います。


 真似が嫌いな人、真似は良くないと思う人、真似が苦手な人、そんな人たちでも、研究という立場に立つことで、これは真似ではないと思うことができるわけです。


 できるわけです……よね?


 研究とは、真似ではなく、普遍性を探す行いです。音楽なら、色んな曲の共通点とか、逆にジャンル別の相違点だとか、曲の持つ何か構造的なものだとか、そういうものを見つけていきます。


 僕にこの考えを教えたのは、20世紀前半の作曲家、バルトークです。


 現代音楽にとらわれ、オリジナリティがないとダメ(今にしてみれば、現代音楽にもセリーとか偶然性とか、潮流(流行り)はあるんですよね。オリジナリティってなんだろ? 流行ってなんだろ? って思います)と思っていた僕に、バルトークは教えてくれました。


 民謡を研究する、研究によって得た知見で曲を書く。


 同じように、ポピュラー音楽やクラシック、民族音楽を研究して、何か共通性のようなものを見つけてきて、作曲する。


 あるいは相違点を見つけて分類し、作曲し分ける。


 (音楽)理論についても同様です。理論は分析のために必要になりますが、研究にはもちろん分析はつきものです


 なので、たとえ独創的でありたくても、やっぱり理論も学んでおいたほうがいい、ということになります。





§完成度




 僕の好きな創作スタンスに、実験があります。


 今までやってこなかったコード進行やアレンジ法を試して、そこで得た効果をもとに作曲を進める方法です。


 こうすることで、オリジナリティを得ることもできます。真似が苦手な人にうってつけのやり方のように思います。


 しかし、この方法には欠点があります。


 誰も試していないやり方を無理やり使うと、完成度が低くなってしまうのです。


 これは、実験のみならず、真似をしないすべての人に言えることです。


 完成度の低さ、それが、真似をしないことの最大の欠点です。


 様々な表現者たちが今まで積み重ねてきた創作法、それに背を向けるわけですからね。一から積み上げていては、とても創作史が培ってきた時間の傑作たちにはかないません。


 真似をする人としない人の作品の違いは、電気が当たり前のように使えて、スマホでブログを書いたり読んだりするような現代人と、自力で火おこししなければならない大昔の人の違いのようなものです。


 火をおこすことから始めて、発電所から自分の家へ送電されるようなしくみを作るまで至るのは、……ええ、どう考えても無理ですよね。


 自分の作品が、そういうプリミティブ(原始的)なものであるほうがいい、というなら、もう何も言いません。でも、そうでないなら、真似したほうがいいのです。


 これは本音です。でも、研究というスタンスは、建て前として使えます。


 音楽を極めるために研究しないといけないから、これは真似じゃない、と。考え方を変えられます。


 現代文明級の完成度を持つ作品を作りたい、そんな人が、それでもなお真似したくないなら、研究というスタンスを取ってみてください。


 バルトークのように。





 バルトークの音楽を聴いてみるとわかりますが、結構難しい作品が多いです。


 当時の流行(表現主義など)から影響を受けており、民謡研究によって得たものを感じにくい曲も少なくないです。


 要は、真似しても、真似っぽくなくできるというわけですね。それは念頭に置いておきましょう。


 なお、既存の作品の作り方を真似しながら、実験的な要素を取り入れることはできます。


 イメージ的な言い方にはなってしまいますが、実験しつつ、完成度を高めることもできるわけです。


 今まで誰も見つけなかった新しい表現が欲しい、という人は、やってみてください。


 音楽が多様であるように、誰かは実験しているんですよね。


 新しいことを試す人がいて、それが色んな人の間で、徐々に磨きをかけられていく。


 その積み重ねにより、さらなる展開として、現代では温故知新的な発想で、過去のジャンルが顧みられたりもする。


 創作の歴史は一言では言い表せない複雑さがありますね。


 それはともかくとして、実験というのは、その実、やっぱり完成度に気を付けないといけません。


 僕の場合ですが、実験的なことをするときは、試行錯誤を繰り返すことが多いです。そう簡単には上出来な作品にならないです。難しいですね。









 似たような記事を以前書きましたが、そのときは冗談めかしたものでした。


 今回は、真似するしないについて本気で悩んでいる人向けに書いてみました。


 真似したり、真似しなかったりすると、命を取られる、ってわけではないので、気楽に考えてもいいと思います(僕が何も考えてなさすぎるのかもしれませんが(-_-;))。